インカレが終了した週のキャンパス,順大に限らず早大においても,出場した選手達と学内で出会う時には,その学生の競技について感想を伝えることにしている.意図は色々であるが,せっかく出場したのだから,そしてせっかく応援に行ったのだから伝えなくては!というものである.そして彼らも出場者としての主観的な感想なり反省を言葉で伝えてくれたりするのであるが,これが私の仕事にとっては,とても参考になったりするわけである.
但し,私の立場の人間は決してコーチングしてはいけないのである.なぜなら,彼らにはちゃんとコーチがついているので,もしもコーチと私のアドバイスがマッチしなかった場合には,私の言葉は選手にとってもコーチにとっても百害あって一利なしになってしまうからである.したがって私のかける言葉はいつも「○○の走りよかったよ!」とか「前半は良かったけれど後半は残念だったね.来年は後半にも期待しているよ!」みたいな感じである.これって結構,無責任な言葉であるが,でもきっと選手は,我々科学者にはそれ以上は求めていないと思うので.特に好調の選手は,多くの場合,科学的なデータなどは気にせずに走るものである.そしてスランプに陥ると科学に頼るか,やる気を無くしてしまうかのどちらかである.後者の場合はそれまでなのであるが,前者のように,不調になってからでも我々のような立場の存在を認めてくる選手には,何とかして力になってあげたいと思ったりもするものである.もちろん科学は万能ではないし,それを操る我々とて万能ではないのであるが,科学が何かのきっかけになってくれれば幸いである.そして調子を取り戻した選手は,多くの場合,自分の実力で不調を脱したと思って復帰するのであるが,私はそれで良いと思っている.スポーツ現場での私達の存在意義はそんなものであるから.但し,スポーツ科学研究現場では話は別である.