取材協力は質を問うべきだな

私の場合、これまでにも雑誌やテレビの取材に対しては快く応じてきました。でも、こういう仕事はちゃんと相手の質を問わないと痛い目に遭うなということを勉強させられました。年末に某フリーペーパーの取材を受けました。事前に受けていたファックスでは、「スポーツでいうバネとは何か?」ということ。そこで、取材では記者さんに対して、スポーツ科学では、バネとは筋は勿論であるが腱が貯えたエネルギーを放出することにより生み出される能力で、それを定量するためにスティフネスという指標が使われるという話をしました。
昨日、原稿が出来上がったいうことでメールで送られてきました。ところが、私のコメントの前に、「フィギュアスケートでは浅田選手のような小柄な選手が、何故あのようなダイナミックなジャンプをすることが出来るのか。」などという話が書かれているではないか。おいおい、私の取材ではそういう流れではなかったではないか.... だったら私の話ってあまり当てはまらないぞ...... と思いながら読み進めると、私のコメントとして「人体でバネの役割をしているのは、『アキレス腱』などの腱。筋肉ではありません。腱には伸び縮みする性質があり、ジャンプのときには、まさにバネと同じ働きをする。きゃしゃな選手でも、高い跳躍ができるのは、その腱の弾性が強いからなんですよ」と書かれているではないか。いや、私は「筋肉ではありません」とは言っていないよ。 しかも私のコメントの後に「スポーツトレーニンコンサルタントの◯◯◯さんによると「ジャンプ力はバネの強さに左右されますが、全身の筋肉をバランスよくつけることも必要。高く速く飛ぶには体の使い方も大事です」とのこと。バネを生かすためには、テクニックや筋力も重要なんですね。」と記載されている。おいおい、それではまるで、私が筋肉をつけるバランスやカラダの使い方は関係ないという前提で話したようではないか。ちゃんと私はカラダの使い方も大事だといったのに...... 
ということで、ちょっと納得がいかなくて、メールと電話で、せめて「人体で主にバネの役割をしているのは、『アキレス腱』などの腱。筋肉だけではありません」とするように伝えました。すると、再びメールが来て以下のようなコメントが記載されていまいた。

↓以下、相手のメール抜粋
●「人体で主にバネの役割をしているのは、『アキレス腱』などの腱。筋肉ではありません」(「主に」だけ修正を反映した形です)
●「人体で主にバネの役割をしているのは、『アキレス腱』などの腱。これは筋肉とは別の部分です」
●「人体で主にバネの役割をしているのは、『アキレス腱』などの腱。必ずしも筋肉ではありません」
というような形に変更させていただくことは可能でしょうか。
今回の原稿では「バネの役割を果たしているのは腱だ」ということを読者にわかりやすく伝えることに主眼を置いておりますので、
「そうはいっても、やっぱり筋肉が重要なんでしょ?」という印象を読者に持たれないように、原稿を構成しようと考えております。
そのため「筋肉だけではありません」という筋肉をバネに含む表現よりは、
腱の役割が明確に分かる表現のほうが読者にわかりやすいと思いまして、上記のようなご提案をさせていただきました。
↑ここまでメール抜粋

......いや、これじゃ、私の指摘は全く修正されていないでしょう。結局、筋肉はバネに関係無いって意味になるし、一時間近い取材での私の話は何だったの?ってことになる。読者の反応を重視するあまりに、話が捏造されているではないか...... これって「あるある....」とかいう捏造番組と同じじゃないの?

私としては、スポーツ科学が一般に普及・理解されることを願って、これまでにも専門誌以外の取材を受けてきましたが、こんな風に扱われるんだったら私の願いは無視されるわけだ。そもそも、もしかしたら、私ごときのような若造がそんなことを願うことも早いのかもしれないですね。これからは取材依頼が来た時に、相手の性質・性格も考えて受けることが必要だと感じました。それから、他分野でスポーツ科学が扱われるときには、このようなこともあるということを考えながら読みたいと思います。