国母選手に関する世論についての私見

この件について話題になっているので、余計なお世話かもしれないが、スポーツやスポーツ科学に関わる立場から、私の考えも述べたいと思う。
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そもそもの発端はスノーボードの代表選手である国母選手が移動する際の服装、そしてそれに対する彼自身の「反省してまーす」という会見である。
彼の服装・着こなしについて、「スノーボーダーだから」という意見もあるが、あの時に彼らが着ていたのは “日本代表団の公式ブレザー”である。つまり、スノーボーダーであるというまえに、オリンピアンであるということを意識すべきである。仮に移動時に来ていたのが私服であれば、そして自費で飛行機に乗りバンクーバーに行くというのであれば、シャツを出そうがネクタイを緩めようが彼の自由なのである。しかし、日本選手団が団体で日本を出発する行為自体が、代表選手としての活動であり、おそらくあの日についてもJOCからは代表選手としての日当という形で手当が支給されているはずである。

北海道大学大学院法学研究科教授の町村泰貴氏は「Olympique橋本団長は高校修学旅行の引率の先生か」と題したブログで以下のように書いている。

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まあ国母君としても、別に入村式なんか出たくもなく、付き合わされなかったことをありがたく思うべきかもしれないが、なんというか、このやり口は服装が乱れているからといって始業式に出席を認めないで追い返す中学高校の先生の姿を思い浮かべるのだ。

中高の生徒指導の大変さは想像するに余りあり、式典に出させないというやり方にも賛否両論あろうが一概に非難するものでもない。
しかし、オリンピック代表選手に対してすることであろうか?

昔は日本選手団だけ、どこか将軍様や党主席様が支配する国のマスゲームよろしく一糸乱れぬ行進を得意として、それが必要な規律だと思っていた時代もあったが、今はカメラやケータイを片手に入場行進を行っても誰も何も言わない。高校野球の入場行進とはわけが違う。
そして式典のお作法ならともかく、出発・到着時の服装の、それも今風に着崩した感じまで目くじらを立てて、出席してあげようという入村式に出させないというのは何様であろうか?

と、私は思うのだけど、皆さんはどう感じるだろうか?

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これは、この先生の大きな勘違いであり、公式ユニフォームを着て移動している時点で代表選手としての活動であると私は考える。 従って街角のシーンと重ねてもらっては困るわけだ。何故かと言われれば、オリンピック代表選手となったことにより、先述の通り、その活動に対しては文部科学省JOCのサポートにより多額の税金が投じられることになるからである。従って「JOCは何様であろうか?」という意見に対しては、「JOCは彼らの活動のスポンサーであり、オリンピックの期間中、選手はJOCのもとに活動する」ということを訴えたい。そしてその目的として、「スポーツ振興による青少年の育成」が掲げられているからである。また、服装のことは勿論であるが「反省してまーす」とうコメントについても同様である。さらに、「オリンピック代表選手に対して失礼であり」という意見については逆であり、オリンピック選手自身が、国民の税金やスポンサー企業の投資により競技を支えてもらっている、競技をすることを仕事として認めてもらっていることを認識して、社会人としての振る舞いをするべきであり、それが出来ないのであれば逆に失礼であると思う。

ネット上には「あれ見てだらしないと思うのは日本人だけだと思うが」という意見も書かれているようだが、たとえ欧米であっても、公式なユニフォームやフォーマルなウェアを来た時には、というかそういうウェアの時にはむしろきちんと着こなすはずである。また、スノボではあれが「定番」のスタイルであっても、公式ユニフォームであれば、そうも行かないのではないだろうか。普段はプロボーダーとして活動しているという彼も、日本代表を引き受けたからには、日本を代表する公人として振る舞うべきではないだろうか?と私は思う。
また、代表選手ではないJリーガー達が、試合前や試合後にバスや電車で移動する際の服装を思い浮かべると、ちゃんとスーツを着こなしている。おそらく、サッカーを仕事としてとりくんでおり、移動の時点から仕事であるからの服装なのだろうと思う。また、アテネ五輪の時には、陸上競技の団表選手団は団長の意見により全員が地毛の色でアテネに飛び立ったと聞く。その時の意図は「日本人の代表として.....」だったそうだ。私的にはそういう方が好きだけれどね。