新学期直前に思う

来年度からの学生募集委員会の委員になり,今日は第一回委員会が開催された.学生募集委員とは,大学案内やオープンキャンパス,学校訪問などの行事を企画運営して,受験生・入学生を獲得するための活動を行う委員だ.何の因果か知らぬが,前任校でも私は学生募集委員だった.大学の専任教員になると,研究・教育以外にもいくつかの委員会委員になり,会議に出席したり,諸業務に関わることも仕事に入ってくる.というか,時期によっては日々これらの仕事に追われることになる.
私立大学では学生の支払う受験料と学費が大きな財源のひとつである.したがって受験生獲得のためのこのような活動は私立大学にとっては重要だ.一般企業で言えば,営業部といったところだろうか.ウチの大学にはこんな魅力的な事がありますよ,とかこんな楽しい授業を受けられますよということを受験生に知らしめすわけである.
オープンキャンパスなどでは模擬授業を行うのが一般的だ.私は前任校でも,そして現在の勤務校でもオープンキャンパスで模擬授業を担当したことがある.模擬授業では僅か30分ほどの時間に,自分の得意なところとか特に面白い内容を,通常授業の120%位の力を入れて行う.ところが,入学後には授業時間は90分となり,しかも毎週毎週14回にわたり行われるわけである.高校では50分授業を受けていた学生が90分間も講義を聴き続けなくては為らないのは苦痛であることは想像に難くないし,たとえどんなに興味ある科目でも14週間も聞き続ければ楽しく無い内容が出てきたり,飽きてきたりもするわけである.
もうすぐ新学期が始まる.こちらも一応教育のプロである.学生から,期待はずれだった,話が違ったなどと言われないように,魅力的な講義を行いたいものである.とはいえ,この問題には教員と学生の相互の努力が必要である.学生に媚を売るのではなく,学問としての楽しさを伝えたいわけであり,そこには学生の努力も必要だ.私の教育ポリシーのひとつに,学生はハードルを高くすればするほどそれを超える能力がつく,ということがある.スポーツ推薦入学生だろうと一般入学生だろうと,結局は各学生の入学後の努力次第というわけだ.私の友人の土江寛裕君は,早稲田大学にスポーツ推薦で入学したにも関わらず,卒業後には大学院に進学して博士課程まで進んだ.しかもその間には二度のオリンピックにも出場している.そして春からは母校の非常勤講師として教鞭をとることになっている.彼はスポーツ科学を自身の競技生活に生かしているアスリートの典型といえるだろう.結局は本人のやる気だということだろう.どんなに競技が忙しいといったって,24時間を通して練習する奴はいないだろうし.我が大学の受験生・入学生にも土江君のような学生がいることを,,個人的には期待する.あくまでも個人的な意見であるが......