研究室

大学教員になると大学から「研究室」を与えられる.大学やポジションによっても異なるが,多くの場合は個室が与えられるが,幸い私の勤務する大学でもそうである.この研究室の利用方法や位置づけは先生方によって様々なようであるが,スタンダードな利用方法としては,研究や教育用の図書や資料を保管する,授業準備や研究活動を行う,研究関連のカンファレンスやゼミナールを行う,共同研究者や業者との打ち合わせを行うといったところである.
一方,大学院生や助手の場合には,多くの場合,比較的大部屋で共同生活をすることとなる.この場合には,一人当たりのスペースも限定されることもあり,私物の持込は有る程度制限されるし,集中して読み書きをしたい時にも,ルームメイトの気配や話し声で集中することが出来ない場合が多い.私が大学院生や助手の場合にもそうであったのだが,自分が研究できないことの理由を相部屋のせいにし,少人数部屋の助手先生や個室をもつ講師以上の先生方を羨ましく思うわけである.そして読み書きは自宅にて行うようにしていたものだ.
先にも述べた通り,私は現在は幸いにも個室を提供して貰えている.副学長が仰るには,私の研究室は,ウチの学部では一番広くて良い場所にあるとのことだ.事実,今の研究室の広さは,前任校の時に占有させて貰っていた研究室の4〜5倍の広さはある.しかし,最近よく思うことは,個室だからといって必ずしも研究がはかどるというわけではないということである.何故なら,教員になれば学生指導という仕事があり,そのために学生が研究室を訪ねてくる場合が多々ある.彼らはこちらが今集中して仕事をしていることなどはお構い無しに自分の用件を伝えてくる場合が多い.さらに,教員になると会議資料の作成を始めとする事務仕事,研究費などの会計業務,そして研究助成の申請書などのデスクワークが付きまとうのである.そして,出張や会議などで,折角の研究室もアルジ不在のことも多々ある.そんなことで,私にとっては,研究室を持つようになって,もちろん自宅に山積みになっていた図書や資料が大学に移ったというメリットはあるものの,研究とか集中する場所という観点では,大学院生時代の大部屋の時の方が良かったのかもしれないなどと考えてしまうわけである.つまりは,研究力と部屋とは無関係ということである.
ところで,最近,国会議員になると議員会館に事務所を貰えるとかいう報道がよくされている.それを見て,こんな所は大学教員と似たところがあるものだ,と私は思ったりする.そして,よく活動している議員ほど,この部屋に人が集まり色々な議論をしてるのかななどと思う.そう考えると,大学教員の研究室も,頻繁に人が来て,研究に関する議論が多く交わされる所ほど,研究成果が出てきたり,研究に活気があったりするのかもしれない.さて,今後,どのように有効活用していこうか.......  しかし,最近,この部屋で卒論への取り組みが皆無な学生の説教ばかりしている気がする.そんな不毛なことには研究室も時間も使いたくないというのが本音だ.また,この愚痴になってしまった.止めよう.