一般入学試験2日目の実技試験が終了した.一日中立ち仕事なので非常に疲れたが,緊張した表情で試験に臨む受験生を前にして,疲れを見せたり弱音を吐くのもどうかと思い頑張った.そして何よりも今日まで準備の実務を担当した廣瀬先生,そしてマイクも使わずに大きな声で受験生に指示を出していた吉村先生の手前,私などが弱音などを吐けるはずも無かった.
受験生を見ながら,自分の受験生時代のことを回想した.私が埼玉大学を受験したのは1991年の2月,以下からもう17年も前のこと,ということは私のこれまでの人生の半分も前のことである(という事に今気付き驚き!).受験生だった私は,自分の将来を決定するであろう入学試験に備え,早朝から起床して試験にトライしたのであった.受験生の私はそれなりの緊張感をもって受験に臨み,そして補助員の学生さん(後の私の先輩方)も厳粛に試験を行っていた.それを思うと,私もそう有りたいと思ったのだが,日頃スポーツコーチングなどは全く行っていない私にとっては,一堂に会した受験生三百余名に指示を出し動かすということは,中々の困難であった.とはいえ,同じく担当だった綾部先生と補助の学生さんのお陰で,大きな問題もなく試験が済んだ気がする.今日学んだことは,指示を出す立場の私が曖昧な表現をしたり,優柔不断になったりすると,集団が動かなくなるばかりか入学試験の厳粛性・厳格性も欠くということである.この点については何も入学試験に限らず,大学教育の多くの点について該当することだ.以後の学生教育にも生かして行きたい.

昨日も記載した通り,入学試験のことなので,詳細なことや試験中の具体的な出来事についてはマル秘であるのでこの場には記載しない.しかしながら,一点だけ非常に気になった事について,あくまでも個人的な考えとして記載する.
入学試験の会場には受験生の保護者や高校の先生が引率する姿を見かけるのは毎年のことである.早稲田大学の場合は大学の敷地内は受験生と入試担当係しか立ち入ることが出来ないのだが,順天堂大学の場合は,試験会場の建物以外には保護者などの引率者が立ち入ることが可能である.そして今年も父兄や先生方らしい方々の姿が見られ,会場となった体育館の入り口まで来て声援を送っていた.そんな中,一人だけ,若い派手なジャージのようなファッション(?)の男性の姿があった.見た目も目立つのだが,言動もちょっと目立った.「何だあれ?」と思い他の先生に尋ねると,どうやら卒業生らしく,卒業後,高校教員となり教え子の受験に引率していたようだ.このように教員となった卒業生が受験生を送り込んでくれること自体は感謝すべきことである.しかしながら,それであれば,受験生に対してもっと見本となるべき服装と言動で振舞って欲しいものである.入学試験は厳粛・厳格に行われるものなのだから.まだ母校だから素性がしれているから良いが,もしもこれが全く他人の大学であった場合には,まさかこんなことは無いわけであるし,晴れて教員となり母校に教え子を送り込みそれに付き添うという,まさに凱旋なわけなのだから,母校の教職員に好印象をもたれ,そして教え子や他の受験生にも胸を張れるような服装と言動を願いたいものである.なぜなら,彼の姿は受験生達の将来の姿になるわけであるから.あくまでも個人的な意見であるが.

入学試験が終了して研究室に戻ると,ゼミの学生達がデータの解析をしていた.私も彼らとデータのディスカッションをしていると,そのうち,例の如く話は雑談となり,彼らの将来の話となった.受験生の入学試験の後は在学生のキャリアについてである.私としては,せっかくスポーツやスポーツ科学に興味を持ち専門の学部に入学したのだから,受験生には,スポーツ科学を単にリベラルアーツ(一般教養)の1つとして捉えるのではなく,多いに専門性を高めて欲しいと思う次第である.特に私のゼミナールを選択するということは,専門教育により深入りすることになるわけだし.また,大学院に行くかどうかとか,将来研究者になるかどうか等という事は,研究をしてみてから,楽しいと思うかどうか,自分は向いていると思うかどうか判断してからを決定すればよいのではないだろうか.専門分野に深入りしたり,研究したりすることもないのに決めることではないわけである.もちろん,大学院に行くのにはそれなりにお金もかかるのだが,お金は後でついてくる(つまり,生活様式に合わせて金策するわけだ)わけで,人生設計をまずお金の有無で行うと,自分の人生や可能性は小さくなるわけである.とはいえ,社会には設計図を描いたり,必要なお金の試算をする人も要れば,実際に工事をして道路を作ったりする人も要るわけで,皆が皆研究者になっても仕方がない.つまり,スポーツの世界でいれば,トップアスリートは競技をすることで夢を売り,それを支える指導者や様々な分野の研究者が居たり,夢を買う子ども達がいて,それらをターゲットとするスポーツ用品メーカーが居る.....とスポーツに関連した仕事といっても多々あるわけだ.したがって,スポーツに関わっていた人はこの中から自分の希望と適所を見出せばよくて,スポーツと無縁を希望する人は無縁の世界に行けばよい.ただそれだけの話である.
さて,入学試験を受験した人のどれだけの人が,順大に入学する人に限らず,スポーツに関連した仕事につくのであろうか.